カナダ一治安の悪い交差点にあるフォトスタジオで働く日本人の業務日誌


by canadianman

194 思い出の写真

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日本に帰ったら自分の部屋にバーンっと大きなトロントの写真を飾っておきたい。
自分で撮った写真、自分でプリントした写真を。
よし、プリントしに行こう。

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さっそく店へ電話する。
プルルル・・・
「はい。もしもし。」
緊張気味のシャンタンが電話にでた。
からかってみる。
「おい!お前のボスはどこだ?」
「今いません。」
「はあ?なんでだ!どこだ!」
「多分家です。」
「なんだと~!いつ帰る?」
「いやあ・・・それより誰ですか!」
「TAQだ。」
「オー!アニキー!アニキか~!」
シャンタンがゲラゲラ笑っていた。
「何いまボスいないの?」
「うん。いないというより今日は来てないよ。」
ええ!
もうシャンタンに店まかしてるし!

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ボスに電話した。
「おおTAQか!5分後にかけなおすわ!ガチャ、ツーツー。」

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1時間後、ボスから電話がかかってきた。
「すまんすまん。何だ?」
「写真プリントしたいから、今から行くわ。今どこ?」
「おお、行って勝手にプリントしとけ。俺は今ちょっと遠くにいるから戻れないかもしれないからな。」
「ああそう。でも24inch x 36inchの特大だよ?大丈夫?」*60cm x 90cm
「何言ってるんだよ。それくらお安い御用だ。」
「ありがとう。じゃあ店へ行ってプリントするね。」

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懐かしい通勤路を歩きながら店へと向かった。
ヅラが木にひっかかっていたこともあったっけ。
これで最後かもしれないのでしっかりと光景を目に焼き付けておいた。

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店へついた。
「おお!TAQ!調子はどう?」
「ああいいよ。シャンタン。イソガシイ?」
「ヒーマ!」
「今日は24inch x 36inchのプリントしにきたんだ。やらせてもらえる?ボスには連絡してあるから。」
「OK。OK。どうぞ。」
夕焼けで真っ赤に染まったトロントの写真をプリントする。
「これアニキがとったの?スゲー!」
「へへ。いいでしょ。」
さすがに大きいので時間がかかる。
シャンタンと雑談しながらできあがるのを待った。
「今どれくらいの頻度で店入ってる?」
「月曜と水曜が休みで、あとは毎日。」
「ええ?土日も?」
「うん。平日は学校があるから3時からで、土日はフル。」
「おお!お前スゲーな!でもやったじゃん。お金稼げるじゃん。」
「うんよかった。ありがとう。」
「どうよ。ここで仕事していて。変な人も多いし、失礼な人もいっぱいいるけど、やってけそう?」
「ノープロブレム。ここでお客さんと話すの楽しい。仕事が好き。クレイジーな人もいるけど、気にしてない。」
「えらいっ!その気持ちがあれば大丈夫だ!それを忘れずに楽しみながら仕事して。」
自分がいなくなって大丈夫だと確信した。
本当にいいやつだな。
シャンタン。

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急にパソコンの画面が変わった。
「プリンターエラー。用紙を確認してください。」
恐る恐るプリンターを見ると、
写真の半分のところで紙が終わっていた。
「ファーーック!」
「おい!シャンタン!予備の紙ある?」
「いや多分ない。」
「ファーーック!あれだけボスにもうなくなるから入荷しとけって言ったのに!今かよ~!」
今日は土曜日。
紙をオーダーしてゲットできるとしても月曜日。
そしてフライトは火曜日。
絶望的だ~。
「シャンタン、ボスに電話して一応聞いてみてくれ。」

■ ■ ■
電話を終えたシャンタンが明るい顔で、
「ボスは月曜に紙をゲットしてプリントできるから大丈夫って言ってたよ。」
と教えてくれた。
しかしシャンタンは月曜休み、誰が紙を取りに行くのだろうか。
月曜を逃すとプリントは不可能。
今までのボスの行動パターンからしてかなり怪しい・・・
うっうっ。
半分は期待しないでおこう。

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閉店まであと1時間だというので、
店を手伝うことにした。
最後にさんちゃんや、
さよならを言えなかったマシュマロマンに会えないかなあ・・・

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黒人のおっさんが来た。
「ハローハウアーユウ?」
丁寧なおっさんだ。
あ。
この顔知ってる。
まわりくどいおっさん!(047参照)
「君のボスはどこかい?」
「ああ、今日はいないですね。月曜は必ず来るって言ってましたけど。」
「ああそうかい。」
ニコニコしながら帰ろうとするので、
「何かピックアップに来たんですか?」
と尋ねた。
「写真の拡大をお願いしていてねえ。」
「じゃあちょっと待って。探してみる。」
大プリントが入っている棚を探す。
「黒人の男が写っている写真が一枚でもあれば、それは私の写真だ。」
ない。
ない。
ないわ。
黒人のチビッコの大きな写真があったので、
「ハイ、どうぞ。」
と笑わせて、
また来てもらうことにした。

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閉店間際、
ボスが来た。
「紙がなくなったのか。」
「ああ、オーダーしてなかったんだね。はい。これが前回注文した伝票。このアイテム番号をフジの人に伝えて。ここに貼ってるのがカスタマーナンバーだからよろしく。俺火曜の朝に家を出るからなんとしても月曜中にプリントしたいんだけど、大丈夫?」
念には念をが彼との付き合い方だ。
「ノープロブレム!」
誰に言っているんだと言わんばかりに、
への字眉で手をはたいた。
しかしむなしくもこの仕草は自分に効果なしで、
不安は続いた。

■ ■ ■
「じゃあ月曜来るから。」
と言ってボスを送り、
シャンタンには、
「もう会えないかもしれないけど、がんばってな。ジャマタ!」
と言って硬い握手をして再会を誓った。
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# by canadianman | 2010-09-25 22:31 | 業務日誌