カナダ一治安の悪い交差点にあるフォトスタジオで働く日本人の業務日誌


by canadianman

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■ ■ ■
トロント最後の日。
今日の任務はダウンタウンでお金の両替、友達とのランチ、そして拡大プリントをゲット。
やることがいっぱいある。

■ ■ ■
家を出る前にボスに電話した。
今までのパターンからいって、
紙のことを忘れている可能性大だ。
プルルル・・・
「おおTAQか!あ、えっと紙はもう注文してしばらくして取りに行く予定だ。夕方来い。7時ごろだ。ガチャ、ツーツー。」
この慌てようは怪しい・・・
電話してよかったと心から思った。

■ ■ ■
ダウンタウンでの用事を済ませ、
友達とランチだ。
もう帰っちゃうんだね~と惜しまれながら、
フォーを食べる。
このお店のフォーは「フォーコムベトナム」また違った味でおいしい。
「・・・で、うちのボスが紙の注文してなくてさあ、今日は7時にまた店に行くことになっちゃったんだよ~。」
と、用紙切れ事件について話をしているところに、
電話がなった。(194参照)
ボスからだ。
何だろう・・・
「もしもし?」
「ヘイTAQ!お前今どこにいる?!」
「今ダウンタウンだけど、何?」
「今から来い!」
「はあ?何で?」
「シャンタンが今日来ないから紙をピックアップに行けない。お前が来てくれ。」
「はあ?だから大丈夫かって聞いたじゃん!なんで早く言わないんだよ~!」
「いや。その・・・で、いつ来れるんだ!」
なんやねんそれ!
最後の最後になんやねん!
頭の中でいろいろ考えたが、
結局行くしかないという結論になった。
「今ダウンタウンだから1時間半くらい。」
「そうか。急いで来いよ。ガチャ、ツーツー・・・」
「・・・」

■ ■ ■
「ごめんね。ほんとうにごめん!」
何度も繰り返して、
友人との予定をキャンセルした。
本当に申し訳ない・・・

■ ■ ■
地下鉄、バスを使い、
1時間半かけてJane x Finchへやってきた。
バタバタしすぎでヘトヘトだ。
ご機嫌ななめ状態で店へ入る。
「カモーン!頼むよ~!」
facebookをしていたボスが、
「おお悪いなTAQ。じゃあ今から紙を取ってくるから店番頼む。」
と言って慌てて店を出て行った。*英語圏で最も一般的なSNS
・・・
・・・

■ ■ ■
トロント最後の日に仕事をするはめになった。

■ ■ ■
まずはプリント注文でも終わらせておくか。
300枚もの大きなオーダーからやっつける。
プリンタの前に座り、
オーダーを開く。
写真の色の校正だ。
大きくてカラフルな帽子を被った女性たち、
紫や緑など色とりどりで光沢のある美しいドレスたち。
ナイジェリア人の結婚式の様子だった。
それにしても、この写真の撮り方、
マシュマロマンっぽい・・・(186参照)
オーダー用紙の名前欄を恐る恐る確認する。
「Z」
間違いない!
マシュマロマンや!
帰るまでに写真を取りに来てくれ~。

■ ■ ■
2時間のただ働き後にボスが戻ってきた。
大きな紙のダンボールをドサっと置いて、
「ほら紙だ。」
と、仕事をしてやったり的な満足顔を見せてきた。
憎たらしい。

■ ■ ■
紙を拡大プリンタにセットしていると、
ボスが
「お前腹減ってるか?」
と聞いてきた。
「ああ。ちょっと。」
「そうか。じゃあこないだいったチャイニーズの店へ行って来るわ。何がいい?」
「ビーフフライドライス。」
「了解。」
・・・
あれ?
ということはまだ働くの?

■ ■ ■
車で5分の場所にあるチャイニーズフードに行ったボスが、
1時間後に帰って来た。
「ほら、フライドライスだ。食べろ。」
「あ、ありがとう。」
トロント最後の食事はフライドライスか。

■ ■ ■
マシュマロマンが来た。
「あー!ハーイ!マイフレンド!」
食べかけのフライドライスを置いて、
マシュマロマンに駆け寄る。
「おお!どこに行ってた!お前のボスにもう日本へ旅立ったなんてウソつかれてたよ。」
とボスの方を見る。
「いや本当だよ。明日のフライトで日本へ帰るんだ。」
「ええ?本当に?オーマイガー!それは寂しいな・・・じゃあ連絡先教えてくれ。兄弟が日本にいるから日本へ旅行に行ったときに会おう。」
最後の最後でマシュマロマンに会えてよかった。

■ ■ ■
「送ってやるからもう少し待ってくれ。」
結局昼過ぎから閉店まで店へいることになってしまった。
トロントでの思い出のほとんどはこの場所があってこそ、
最後の最後までどっぷりだったな・・・

■ ■ ■
閉店時間になり、
店を閉める。
2人でボスの車に乗り込んだ。
「ああ。これで本当に最後だなあ。今でも初めてお前をこうやって家まで送った日のことを覚えているよ。」
「まじで?俺は忘れたなあ。ははは。」
お互い言葉が続かない。
家の前の通りにさしかかったとき、
ボスが口を開いた。
「いいか、前にも言ったけど、正しい行いをしていれば必ず道は開ける。将来のことを不安に思わず、今を正しく生きるんだ。何も心配することはない。1年間俺の店に来てくれてありがとう。お前のおかげで店は良くなったよ。」
「ありがとう。こんな俺を助けてくれてありがとう。」
握手をし、
ハグを交わした。
街灯の明かりでうっすら見えるボスの目が少し濡れているのをみて、
涙が出そうになったがグッとこらえた。
車を降り、
ドアを閉める。
「じゃあね!」
ボスの車が見えなくなるまで手を振り続けた。
ありがとう。
ほんとうにありがとう。
こうしてトロント最後の1日が幕を閉じた。
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by canadianman | 2010-09-27 21:28 | 業務日誌

194 思い出の写真

■ ■ ■
日本に帰ったら自分の部屋にバーンっと大きなトロントの写真を飾っておきたい。
自分で撮った写真、自分でプリントした写真を。
よし、プリントしに行こう。

■ ■ ■
さっそく店へ電話する。
プルルル・・・
「はい。もしもし。」
緊張気味のシャンタンが電話にでた。
からかってみる。
「おい!お前のボスはどこだ?」
「今いません。」
「はあ?なんでだ!どこだ!」
「多分家です。」
「なんだと~!いつ帰る?」
「いやあ・・・それより誰ですか!」
「TAQだ。」
「オー!アニキー!アニキか~!」
シャンタンがゲラゲラ笑っていた。
「何いまボスいないの?」
「うん。いないというより今日は来てないよ。」
ええ!
もうシャンタンに店まかしてるし!

■ ■ ■
ボスに電話した。
「おおTAQか!5分後にかけなおすわ!ガチャ、ツーツー。」

■ ■ ■
1時間後、ボスから電話がかかってきた。
「すまんすまん。何だ?」
「写真プリントしたいから、今から行くわ。今どこ?」
「おお、行って勝手にプリントしとけ。俺は今ちょっと遠くにいるから戻れないかもしれないからな。」
「ああそう。でも24inch x 36inchの特大だよ?大丈夫?」*60cm x 90cm
「何言ってるんだよ。それくらお安い御用だ。」
「ありがとう。じゃあ店へ行ってプリントするね。」

■ ■ ■
懐かしい通勤路を歩きながら店へと向かった。
ヅラが木にひっかかっていたこともあったっけ。
これで最後かもしれないのでしっかりと光景を目に焼き付けておいた。

■ ■ ■
店へついた。
「おお!TAQ!調子はどう?」
「ああいいよ。シャンタン。イソガシイ?」
「ヒーマ!」
「今日は24inch x 36inchのプリントしにきたんだ。やらせてもらえる?ボスには連絡してあるから。」
「OK。OK。どうぞ。」
夕焼けで真っ赤に染まったトロントの写真をプリントする。
「これアニキがとったの?スゲー!」
「へへ。いいでしょ。」
さすがに大きいので時間がかかる。
シャンタンと雑談しながらできあがるのを待った。
「今どれくらいの頻度で店入ってる?」
「月曜と水曜が休みで、あとは毎日。」
「ええ?土日も?」
「うん。平日は学校があるから3時からで、土日はフル。」
「おお!お前スゲーな!でもやったじゃん。お金稼げるじゃん。」
「うんよかった。ありがとう。」
「どうよ。ここで仕事していて。変な人も多いし、失礼な人もいっぱいいるけど、やってけそう?」
「ノープロブレム。ここでお客さんと話すの楽しい。仕事が好き。クレイジーな人もいるけど、気にしてない。」
「えらいっ!その気持ちがあれば大丈夫だ!それを忘れずに楽しみながら仕事して。」
自分がいなくなって大丈夫だと確信した。
本当にいいやつだな。
シャンタン。

■ ■ ■
急にパソコンの画面が変わった。
「プリンターエラー。用紙を確認してください。」
恐る恐るプリンターを見ると、
写真の半分のところで紙が終わっていた。
「ファーーック!」
「おい!シャンタン!予備の紙ある?」
「いや多分ない。」
「ファーーック!あれだけボスにもうなくなるから入荷しとけって言ったのに!今かよ~!」
今日は土曜日。
紙をオーダーしてゲットできるとしても月曜日。
そしてフライトは火曜日。
絶望的だ~。
「シャンタン、ボスに電話して一応聞いてみてくれ。」

■ ■ ■
電話を終えたシャンタンが明るい顔で、
「ボスは月曜に紙をゲットしてプリントできるから大丈夫って言ってたよ。」
と教えてくれた。
しかしシャンタンは月曜休み、誰が紙を取りに行くのだろうか。
月曜を逃すとプリントは不可能。
今までのボスの行動パターンからしてかなり怪しい・・・
うっうっ。
半分は期待しないでおこう。

■ ■ ■
閉店まであと1時間だというので、
店を手伝うことにした。
最後にさんちゃんや、
さよならを言えなかったマシュマロマンに会えないかなあ・・・

■ ■ ■
黒人のおっさんが来た。
「ハローハウアーユウ?」
丁寧なおっさんだ。
あ。
この顔知ってる。
まわりくどいおっさん!(047参照)
「君のボスはどこかい?」
「ああ、今日はいないですね。月曜は必ず来るって言ってましたけど。」
「ああそうかい。」
ニコニコしながら帰ろうとするので、
「何かピックアップに来たんですか?」
と尋ねた。
「写真の拡大をお願いしていてねえ。」
「じゃあちょっと待って。探してみる。」
大プリントが入っている棚を探す。
「黒人の男が写っている写真が一枚でもあれば、それは私の写真だ。」
ない。
ない。
ないわ。
黒人のチビッコの大きな写真があったので、
「ハイ、どうぞ。」
と笑わせて、
また来てもらうことにした。

■ ■ ■
閉店間際、
ボスが来た。
「紙がなくなったのか。」
「ああ、オーダーしてなかったんだね。はい。これが前回注文した伝票。このアイテム番号をフジの人に伝えて。ここに貼ってるのがカスタマーナンバーだからよろしく。俺火曜の朝に家を出るからなんとしても月曜中にプリントしたいんだけど、大丈夫?」
念には念をが彼との付き合い方だ。
「ノープロブレム!」
誰に言っているんだと言わんばかりに、
への字眉で手をはたいた。
しかしむなしくもこの仕草は自分に効果なしで、
不安は続いた。

■ ■ ■
「じゃあ月曜来るから。」
と言ってボスを送り、
シャンタンには、
「もう会えないかもしれないけど、がんばってな。ジャマタ!」
と言って硬い握手をして再会を誓った。
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by canadianman | 2010-09-25 22:31 | 業務日誌

193 サインゲット

■ ■ ■
ルームメイトに手伝ってもらい、証明書の文章ができあがった。
ここからがもっとも緊張するところ、プリントだ。
別の紙にプリントして位置を確かめる。
大丈夫だ。
ボスにもらったボロボロの紙を入れ、
プリントボタンを押した。
ウィーン
紙質が違うので、プリントできるか不安だったが、
きれいに字が出ている。
おお。
よかった。
と思って手にとると、
文字がななめっていた。
1年の集大成がこれか・・・

■ ■ ■
昼、ルームメイトがジャークチキンを食べたいと言って来たので、
一緒にJane x Finchまで行くことになった。

■ ■ ■
ルームメイトに車で待っていてもらい、
書類を持って店へ行く。
店内はお客さんでいっぱいだ。
シャンタンとボスが忙しそうにしている。
にやにやしながらそぉーっと入った。
しばらく2人とも気づかなかったが、
1分くらいしてシャンタンと目が合った。
「オー!アニキー!!!ハウアーユウ!?」
「オー!TAQ!」
ふたりとも嬉しそうだ。
「オー!忙しそうだねえ!」

■ ■ ■
「TAQ!ささ、どうぞ。」
シャンタンがパソコンの前の席を譲ってくれる。
「ありがとう。」
「TAQ、どうぞ、働いていいよ。どうぞどうぞ。」

■ ■ ■
店内はお客さんでいっぱいなので、
ちょっとサインをもらいにくい。
ルームメイトを待たせているし、
ジャークチキンをゲットしたあとに来ることにした。
「忙しそうだからまた後来るね!」

■ ■ ■
店の反対側にあるモールの一角にある、
ジャメイカンフードの店がルームメイトのお気に入りの店だ。
店員全員ジャメイカン、
店内の雰囲気も超ジャメイカンで、
カナダにいることを忘れてしまうような場所だ。
愛想のないおばさんにジャークチキンを注文する。
出来上がるまで待ち時間、
外をぼ~っと見ていると、
黒人男性と目が合った。
あ。
あれ誰だったっけ?
あ~!
ねちっこい紳士!(158参照)
彼も気づいたのか、
手をあげ、
店へ入って来た。
「おお。ヨー。元気か?」
「久しぶりだねえ。」
「ところでこの隣にあったコンピュータ屋どうなったか知らないか?つぶれたみたいなんだが。」
「ああ、こっちのモールのことはよくわかんないよ。」
「ああ。そうか。じゃあな。」
「ああ。ちょっと待って。俺もう店やめて、次の火曜に日本に帰るんだ。あんたに会えてよかったよ。じゃあね。」
「おお。そうなのか。日本でがんばれよ!じゃあな。」
ケンカばかりしていた彼とも最後はいい感じになれたなあ・・・
ルームメイトが、
「お前どれだけJane x Finchのやつら知ってるんだよ!」
とJane x Finchで顔が売れているジャパニーズにびっくりしていた。

■ ■ ■
ジャークチキンをゲットし、
店へ行った。
暇そうなのでちょうどよかった。
「書類作って来たよ。」
とボスに書類を渡す。
「おお、いいの作ってきたじゃないか。よし。サインしてやる。」
とサインをゲットした。
「他に俺がお前にしてやれることはないか?」
用事が全て終わったのでボスが寂しそうだ。
「ありがとう。とりあえずはそれで十分だよ。今、ルームメイトを待たせているから行くけど、また来るよ。家から近いし。じゃあね!」
と言って店を出た。
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by canadianman | 2010-09-23 22:47 | 業務日誌

192 紙ゲット

■ ■ ■
夕方、ルームメイトがフォーを食べにいこうと誘って来た。
近場でフォーといえば、そう、隣の隣にあったレストラン、「フォーコムベトナム」しかない。
彼の車に乗り込み、Jane x Finchへと向かった。
たった2週間なのに、ずいぶん久しぶりに感じる。
「おお!ハウアーユウ!」
店のだんなが嬉しそうに声をかけてくれた。
「ハーイ!戻ったよ!」
店を見ると、さんちゃんの友達が食事をしていたりと、
ホームに戻ってきた感じがする。
久々のフォーがうまい。

■ ■ ■
今日は行くつもりじゃなかったが、
せっかくここまで来たので顔を見せることにした。
音を立てず、そぉ~っと店へ入る。
パッと顔をあげたボスと目があった。
「おお!TAQ!」
嬉しそうにボスが入口までかけよってきた。
「旅行はどうだった?よかったか?」
「ああよかったよ~。本当にいい旅行だったよ。どう?お店の調子は?」
「ああ、いいよいいよ。問題なしだ。そうかそうか。うんうん。」
握手を交わしながら話をする。
1、2分世間話を交わしたところで、
ボスに落ち着きがなくなりはじめた。
話をうわのそらで聞きながら何かを探している。
あ。
まさか・・・
小さな声で、「あれ?」
と言いながら、ノートの下や伝票の下などを探している。
あれを探しているに違いない。(191参照)
「お前、金曜に来るって言ってなかったか?」
と、レジの下を捜索中のボスが聞いてきた。
「うん。言ったけど、たまたま近くに来てさ。書類でしょ?いいよいいよ。また来るからさ。」
「いやっ。ちょっと待て。」
お。
そこまで必死ということは、ちゃんと用意してくれてたのか。
やるな。
今度は奥の部屋に行ってガサガサし始めた。
しばらくして、
「ふぅー。」とすっきりした顔のボスが一枚の紙を持って来た。
「これだ。これにお前がDPLで働いていたっていう文章をプリントして持って来い。サインしてやる。」
と言って、
一応店のロゴは入っているが、折れ曲がって汚らしい紙切れを渡してきた。
はあ?
ハーア?
一緒にいたルームメイトが苦笑しながら、
「帰ってアイロンにかけよう。」
とアドバイスをくれた。
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by canadianman | 2010-09-22 22:59 | 業務日誌

191 証明書

■ ■ ■
日本での就職のために、このお店で働いていたという証明書をもらっておきたい。
証明書を出してくれというメールをボスに送った。
「ボス、ハウアーユウ?お店はどうですか?シャンタンはうまくやっていますか?ところでお願いがあります。日本で仕事を得るためにここで1年間働いていたという証明書が欲しいんです。なぜならあなたしか僕がここで働いていたことを証明できる人はいないから。前にも言ってたように、帰国の前にもう一度店に寄るから、もしそのときに一緒にその紙をもらえたらハッピーです。よろしく!TAQ。」
送信!

■ ■ ■
1時間後、メールが帰ってきた。
「TAQ!俺は元気だ。だがとっても退屈だ。なぜならお前がいないからな。シャンタンはうまくやってる。証明書の件だが、だめだ。出せない。悪いな・・・もし俺がお前に証明書を出したら、お前は日本で就職して、もうこの店へ戻って来なくなってしまうだろう?お前は俺とここに残るんだ・・・笑
・・・
間違いなくオリジナルレターでお前がここにいたことの証明書を出すよ!じゃあまたな!」
ありがとうボス!
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by canadianman | 2010-09-21 22:59 | 業務日誌

190 鍵

■ ■ ■
終わった終わったと思っていたが、
よく考えたら鍵を返さなくてはいけない。
忘れないうちに行動だ。
店へ電話をかける。
「トゥルル、トゥルル・・・もしもし?」
元見習いのシャンタンの声だ。
よしちゃんとやってるかテストしてやろう。
「もしもし?あー、えっとオーナーはいますか?」
「え、あ、あはい。え~。オーナーは今出ています。」
ガチガチに緊張しているのが伝わる。
面白い。
「ああそうか。いつごろ帰って来ますか?」
「ええ、ええと30分で戻ると言っていました。あのお名前は?」
「TAQと言います。」
「ああ!アニキ!コンニチュワ!」
「ははは~。ちゃんとやってるじゃないか~。ボス30分で戻るって?じゃあそれぐらいに行くわ~。じゃあまた。」

■ ■ ■
ボスの30分は一般的に2時間と呼ばれている。
念のため携帯に電話だ。
「もしもし。」
「もしもし?TAQだよ。30分後に店に行こうと思うんだけど大丈夫?」
「おおTAQか!ああ30分後だな。大丈夫だ店へ行ってる。」
「じゃあ後で。」

■ ■ ■
通勤路の写真を撮りながら店へ向かった。
ちょうど30分で到着し、店へ入る。
何人かのお客さんにシャンタンが対応している。
ボスはいない。
「ハロー。」
「おおTAQ!元気?」
仕事じゃないときに来るとなんか変な感じがする。

■ ■ ■
今日は土曜なのでわりと忙しい。
お客さんが次々やってくる。
もたつくシャンタンが気になり、
お客さんも自分のことを店員だと思っているので、
普通に仕事を始めた。
いや~働いてないと落ち着かない・・・

■ ■ ■
店へ着いて30分後、
ボスが戻って来た。
散髪してさっぱりしている。
「オー!TAQ!」
前の日に会ったばかりなのに、こういう状況で会うと久々の再会のような感じがする。

■ ■ ■
「お前今日はいつまで暇だ?ランチでも行かないか?」
「ああ、ありがとう。でも3時半にダウンタウンに行かないといけないから、2時半にはここを出たいんだよね。あと30分しかないから今日は難しいや。また今度!」
「そうか・・・」

■ ■ ■
「ボス!はいこれ鍵。」
店の鍵をボスに渡す。
受け取ったときのボスの悲しそうな顔を見てちょっと辛くなった。
そしてボスはピカピカの像の前に鍵を置き、
「これで明日からはシャンタンの鍵だな。」
と言った。
ピカピカの像の前は日本で言う神棚、仏壇のようなものみたいだ。
清めてから新しい持ち主の元へ行くのだろう。

■ ■ ■
「ねえ、最後に一緒に写真撮ってくれない?」
ボスに言った。
「ああもちろん!」
シャンタンに頼んで写真を撮ってもらう。
なんか照れくさかった。

■ ■ ■
「駅まで送ってやるからもうちょっと待ってくれ。」
ピカピカの像の整備が終わるのを待つ。

■ ■ ■
30分押しで店を出発した。
駅までの車内でいろいろな話をする。
お互いしんみりしたくないので、わざと明るい話題にしているような、
そんな感じがした。
そして駅へ着いた。
「ありがとう。じゃあ帰国までにまた店へ寄るから!また電話する。」
と言って握手をして別れた。
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by canadianman | 2010-09-11 23:34 | 業務日誌

189 あとがき

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カナダのトロントという街で、ここだけは行くなと言われているエリアがある。
Jane x Finch。
銃犯罪、麻薬犯罪のメッカでその名を知らない人はいないくらいだ。
僕はそこで1年間働いた。
最初はとても不安だった。
しかし働き始めると、
ここには暖かくて人間らしい人がたくさんいることに気がついた。
店を辞める日、
悲しくて泣いた。
ここでの出会い、思い出は一生忘れないだろう。

こんな僕を信頼して店をまかせてくれたボス、
あなたとの出会いはかけがえのないものです。
どうもありがとう。
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by canadianman | 2010-09-10 23:52 | お知らせ

188 さようなら

■ ■ ■
まだ先、まだ先だと思っていた最後の日の朝になった。
今日で最後か・・・
ボスからおみやげでもらったシャツを着る。(185参照)
洗面所に行き、鏡の向こうの自分を見た。
ダサい!
よし出発だ。

■ ■ ■
開店時刻の5分前に店へ着いた。
まだボスは来ていないようだ。
店の鍵を開け、OPENのネオンサインを点灯させ、開店の準備だ。

■ ■ ■
開店してしばらくしてボスが来た。
「モーニン!ハウアーユー?とうとう最後の日だなぁ。」
「モーニン。ああ、そうだね。悲しいよ。」
「寂しくなるなあ・・・おおこれ。これでよかったか?」
ボスからティムホートンのグリーンティーを支給された。*カナダのドーナツ屋さん
おお気がきくねえ。

■ ■ ■
「TAQ!ちょっといいか?話がしたい。」
珍しくボスがかしこまってきた。
「何だよ?」
「お前日本へ帰ってから何をするんだ?おお。そうだったな。で、具体的には何をするんだ。そうか。だが、これは覚えておいてくれ。お前はいつでもこの店へ帰ってくることができるからな。」
「もちろん!これからもずっとつながってるから大丈夫。」
おお。
やっぱりいい人だ。
最初は怒られてばっかりだったなあ・・・

■ ■ ■
「ハローTAQ。」
前に何度か店へ来てくれたバーバリーさんが来た。
「ハーイ!バーバリーさん!わぁ~嬉しい!実は僕今日で最後なんですよ。あなたに会えてよかったです。」
「あら~そうなの?あなたがいなくなると寂しくなるわぁ。今日はあなたに写真を撮ってもらおうと思って。でもよかったわ。あなたがいるうちに来れて。」
最後に素敵な夫婦の写真が撮れた。

■ ■ ■
ボスが壁にかける棚を持って来た。
「おいTAQ!ちょっと手伝ってくれ。」
と言って新しいプリンタの上に棚を設置し始めた。
インクや紙でも置くのだろうか・・・
背の低いボスを手伝い、
ガラス製のしっかりした棚が完成した。
「よし。強度も大丈夫だな。」
少し離れて腕組みをするボス。
満足そうだ。
そして今度は奥の部屋から発砲で頑丈に梱包された箱を持って来た。
まっまさかそれは・・・
カッターナイフでテープを切り、
箱を開ける。
すると中からヒンドゥーの神様5体セットが出てきた。
でた~!
そしてそれを棚に置き、
電源コードの先にプラグ変換機をつけ電源を入れる。
ピカピカ
おお!
ピカピカの像パート2!

■ ■ ■
黒人男性が来た。
「このカードに入っている写真をプリントしたいんだが。」
「いいですよ。じゃあカード貸してもらえる?」
男性からカードを受け取り、プリント注文機のところへ案内する。
しかしここで彼のカードが使えないことに気がついた。
前にさんちゃんが壊れたカードをつまらせて現在使用不能だった。
「ああ。ごめん、このカードは使えないから、パソコンで作業しましょう。こっちへ来て。」
とパソコンの前に案内する。
「これがカメラの中の写真で、このフォルダにプリントしたい写真をコピーしてくれる?こうやってマウスでドラッグアンドドロップでコピーできるよ。ほら。」
「おお。分かった。ありがとう。」
男性はそう言ったものの、動きがぎこちない。
パソコンになれていないのだろう。
こっちは他の仕事があるので自分の仕事を続ける。
しばらくすると電話をしていたボスが彼の隣に来た。
「ほらこうやって"Ctrlキー"を押しながら選ぶと、何枚か同時に選べるよ。そうやると早い。」
おお、珍しく仕事をするじゃないか。
しかしこのパソコンになれていないおじさんにその操作法を教えても大丈夫か?*"Ctrlキー"を押しながらクリックすると複数選択できるが、"Ctrlキー"を押しながらスライドすると複製してしまう。
そして10分後、
「よし。終わった!」
と男性が言うので、
30分後に来るように言った。
よし。
プリント開始だ。
・・・
18枚しかない。
あんなに時間がかかって18枚はないだろう。
200枚以上あると言っていたのに。
彼のメモリーカードのファイルを見てみる。
するとコピーされた写真がカードの中に2000枚以上たまっていた。
意味ないじゃん・・・

■ ■ ■
黒人女性が来た。
「パスポート写真を撮ってちょうだい。」
「うん。OK。」
椅子へ座ってもらい、写真を撮る。
プリンタの前へ行こうとすると、
朝から終始電話をしているボスと目があった。
電話中の彼はいつもおかしな行動をする。
今回は何も頼んでないのに、
「おお、ちょっと待ってくれ。」
とお願いされた。
はあ?

■ ■ ■
奥の部屋で、
薬品類を整理していると、
ものすごい大きな声が店内から聞こえた。
何事かと思ってみると、
車屋のおっさんがいた。(076参照)
声でかっ!

■ ■ ■
タミル人のお姉さんとお母さんが来た。
店内へ入り3mほど歩いたところで、
壁に飾ってあるパイナップル頭の遺影に気がついた。(065参照)
お姉さんは慌てたようすでお母さんとタミル語で話している。
お母さんは大笑いだ。
お姉さんがボスに、
「これ、彼の許可を得て置いているの?」
と話しかけた。
もちろん無許可だが、
「ああ、彼も知っているよ。」
とボスが愛想良く返事をした。
顔の似ている具合から判断して、
彼女はパイナップル頭の妹だ。
ついにパイナップル頭の身寄りが現れて嬉しい。
引きとってもらえるのかと思ったら、
裏返しにしただけで店を出て行った。
かわいそうにパイナップル頭・・・

■ ■ ■
今日は最後なので店にいてくれるんだなと思っていたボスが、
電話をしながら何事もなかったように出て行った。

■ ■ ■
黒人男性が来た。
パスポート写真の注文だ。
写真の待ち時間の間、
彼は携帯電話で話をしている。
耳を傾けると聞いたことのない言葉だ。
これは新しい国の予感・・・
できあがった写真を見せると、
「おお!これはきれいな写真だなあ。どうもありがとう!」
とフレンドリーだったので、
「喜んでもらえてよかった。ところであなたはどこの出身?僕はジャパンだよ。」
と話しかけた。
「おー!ジャパーン!だからいい写真を撮るんだなあ。俺はアフリカ、ガンビア出身だよ。俺の友達にこの店のこと宣伝しておくよ。じゃあね。」
おお!
やっぱり新しい国追加!

■ ■ ■
店がちょっと暇になったとき、
常連さんのパヒーラが来た。(014参照)
このすごいタイミングに鳥肌が立つ。
というのも、もう3ヶ月ほど彼の姿を見ていなかったので、
店を変えたのかなと思っていたからだ。
「パヒーラ!」
とても優しいおじさん、パヒーラとハグを交わす。
「本当に久しぶりですね。うわぁ本当会えてよかった~。」
「バディ、久しぶり。ここのところ本当に忙しくてねえ。」
「もしかして今日が最後って知ってたの?」
「え?何のこと?」
「あ、じゃあ偶然?いや、実は僕今日でこの店やめるんです。日本へ帰るんです・・・」
「ええ。そうだったのか・・・君に会えてよかったよ。でもバディよく聞け。この国は素晴らしい国だ。絶対チャンスを逃すんじゃないぞ。俺は1989年にこの国へやってきた。最初は本当に大変だった。でもがむしゃらに働いた。そして子供ができ、彼らが大学へ行き、いい仕事についた。今では大きな家を持ち、楽に暮らしているよ。最初は大変だが、そこまでがんばればこの国は天国だ。幸せな暮らしが待っている。いいかバディ、このチャンスを逃すなよ。いつかまた帰って来るんだ。わかったな。」
このタイミングでパヒーラさんの説教を聞き、
いつか本当に戻ってくるのかもなあと思った。
最後はまたハグを交わして別れた。
「いいかバディ、3ヵ月後に会おう。」
いやそれは無理ですと思いながらも笑顔で手を振った。

■ ■ ■
「アニキ、コンニチュワ。」
見習いのシャンタンが来た。
「今日でお前の見習い期間も最後だな。明日からこの店を頼むぞ。」
「TAQがいなくなると寂しいよ。」
初めの頃から考えるとシャンタンも随分たくましくなったなあ・・・

■ ■ ■
「ハーイTAQ!」
もう一人の従業員、ガーヤとそのダンナのカーナが来た。
「おおガーヤ!俺今日までなんだよ。最後に会えてよかった。」
「ええ今日だったの?そう・・・」
彼女のダンナの写真をプリントし、
ガーヤに渡す。
「君に会えてよかったよ。これからもよろしく。」
と言って手を差し伸べた。
ガーヤも握りかえし、
「私もあなたに会えてよかったわ。でもこれで最後じゃないわよ。あなたはまたここへ来るの。だからさよならは言わないわ。」
と言って店を出て行った。
彼女がいなかったらこの2ヶ月半絶対に店を回すことはできなかった。
ありがとうガーヤ。

■ ■ ■
プルルル・・・
電話がかかってきた。
「もしもし?」
「ワースアップ!俺だ。」
おとくいフォトグラファーのトーシンからだ。(187参照)
「ワースアップ!」
「お前今日で最後だよなあ。ごめんな今日は忙しくて行けそうにないよ。日本での新しい生活にグッドラック!メールくれよな。これからもキープインタッチだ。わかったな。」
「ありがとう。もちろんメール送るよ!facebookも!」
彼にはいつもいい写真を見せてもらい、勉強させてもらったなあ。

■ ■ ■
タミル人男性が来た。
「君のボスはどこだ?」
ボスに用事があるようだ。
「ああ今日はもう帰っちゃってねえ。電話しようか?ちょっと待ってよ。はい。かけたから。」
と言って電話の子機を渡す。
1、2分会話をし、子機を渡してくれた。
「今日で君最後らしいな。彼は寂しい、寂しいと嘆いていたよ。」
「そう。今日で最後なんだよ。彼寂しいって言ってた?」
だったら電話しながら帰るなや。

■ ■ ■
プルルル・・・
電話がかかってきた。
「もしもし?」
「ハーイ。あなた今日はいるのね。何時までやってる?」
「8時半までやってるよ。」
「よかった。じゃあ30分で行くわね。」
このガイアナなまりの英語、そしてこの声、多分あのお客さんだ。

■ ■ ■
シャンタンが帰り、
夕方店が暇になった。
「ハロー。」
娘3人を連れたガイアナ人のお母さんが来た。
「ああやっぱり。あなただったんだね。」
この人が最後のお客さんかな・・・

■ ■ ■
彼女の写真を一枚一枚校正する。
「ああ、これはもう少し明るくしてちょうだい。これはOK。」
時間はかかるが、指定してもらえるとこっちも助かる。
約100枚の写真の色を校正し終わり、
あとは出来上がりを待つだけだ。
「今日はあなたがいてよかったわ。前回もその前も忙しくてお願いできなかったものね~。」
「ああそうだったね。ごめんねえ。それと実は僕今日でこの店終わりなんだ・・・」
「ええ!なんでよ~!ええ~!せっかくあなたという人を見つけたのに~。あなたの代わりにしてくれる人いる?ボスじゃだめよ。」
「シャンタンっていう若い男が入ったから、写真を持ってきてTAQがしたようにプリントしてって言ってもらえればやってくれるよ。彼はとても親切だから大丈夫。」
「本当に?いやでもあなたがいなくなると寂しいわ~。」
出来上がった写真を渡す。
「やっぱりキレイなプリントね。ありがとう。ああこれでお別れね~。カム。ハグをちょうだい。」
最後はハグをして彼女と別れた。
写真屋の店員にハグしてくれるなんて、
普通じゃないよなあ・・・
ありがとう。
最後のお客さんは彼女たちだった。

■ ■ ■
閉店時間になった。
結局ボスは帰ってこなかった。
掃除をし、
プリンタの電源を落とす。
「今日で本当に最後か・・・」
ついつい独り言が出てしまった。
トナーを取り出し、
バケツへ入れる。
何も考えなくても体が覚えていて勝手に動く。
思えば約1年間この作業をしたんだものな・・・
今まで実感がなかったが、
この瞬間に「終わっちゃったんだな。」と思えた。
今までの辛かった事、楽しかった事がどんどんよみがえってくる・・・
眉間にすごく力が入り、
目と目の間が熱くなってくる。
ぽとっ
ぽとっ
トナーを取る手に涙が落ちてきた。
「俺泣いてる?」
自分で泣いているというよりも、
魂が泣いているような、
心の底から出てくる涙のように感じた。
トナーを入れたバケツを持ち、
まるで小学生のように、
腕で目をぬぐいながら奥の部屋へ行く。
「明日からこの店の店員じゃなくなるんだ・・・」
そう思うと余計に泣けてきた。
バケツに水を入れながら、
レジの清算を始める。
泣きながらレジのお金を数えている人を見れば、
誰だって怪しいと思うだろう。
早く泣きやまねば。
焦るがなかなか涙が止まらない。
そして全ての片付けが終わった。
「ありがとう。」
お店へそう言って、
鍵を閉めた。
TAQお疲れ様。
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by canadianman | 2010-09-10 22:59 | 業務日誌

187 ジャメイカン

■ ■ ■
朝の9時半、
店を開ける。
ボスはまだ来ていないみたいだ。

■ ■ ■
開店してしばらくしてボスが来た。
右手には注文しておいたフレームを持っている。
おお。
最低限のことはしているな。
よしよし。

■ ■ ■
「TAQ!グリーンティー飲みたいか?」
ボスのリクエストによりティムホートンへグリーンティーをゲットしに行った。

■ ■ ■
「ワースアップ!」
おとくいフォトグラファーのトーシンが来た。
ボスを見るなり、
「ヘイ!ハウアーユー!旅行はどうだった?」
と久々の再会を喜んでいた。
1、2分世間話をしたところで
ボスが店を出て行った。
早っ。

■ ■ ■
「ハーイ。TAQ。」
ルワンダ人のマリアムが来た。(140参照)
「おお、久しぶりじゃない。」
「ちょっと最近忙しかったの。うふふふ。」
「マリアム、俺明日でこの店終わりなんだ。」
「ええ!ちょっと聞いてないわよ。ウソよ!だめよ!えええ~。あなた私に言ってなかったじゃない・・・」
本気で悲しんでくれるので、
こっちも辛い。
「日本へ帰ってもずっと友達よ。アフリカへ行くときは案内するから言ってね。」
ありがとうマリアム。

■ ■ ■
「アニキ、コンニチュワ。」
見習いのシャンタンが来た。

■ ■ ■
喉が渇いた。
トマトジュースが飲みたい!
半年に1度くらいの頻度で、
トマトジュースがむしょうに飲みたくなることがある。
今日はコンビニへ買いに行くことにした。
最近よく行くベトナミィーズサンドウィッチ屋さんの隣にあるコンビニだ。
初めて入るが、
かなりオールドスクールなお店だ。
トマトジュース、トマトジュース・・・
半信半疑だったが、
みごとに3種類もトマトジュースがあった。
Henry'sのトマトジュースを2本つかみ、
レジへ行く。
店員はアジア人だ。
顔的に韓国人っぽい。
自分の前の黒人のお客さんの相手をしているが、
ものすごい無愛想だ。
「なんとかかんとかくれ。」
タバコを注文している。
すると頭の上にあるタバコの棚から彼のタバコをボトっと落とした。
ひどい!
しかしそれを気にする様子もなく、
黒人のおじさんは金を払い出て行った。
しかし、おつり5セントを忘れていたらしく、
店員が、
「ヘイ!ボンボクラ!」*ジャマイカの言葉でバカヤロウ
と呼びつけ、
おつりを渡していた。
何だこのタフな韓国人は・・・
そして自分の番になった。
ちょっとびびりながらストローがもらえないか尋ねる。
そして、
「君、韓国人?」
とストレートに質問したら、
「いや。ジャメイカン。」
と言われた。
その顔でジャメイカンはないだろう。
このエリアはすごい。

■ ■ ■
店へ戻るとき、
隣の店の女の子に会った。
「ハーイ!」
「ハーイ!あなたいつ日本へ戻るんだったっけ?」
「今月末だよ。仕事は明日までさ。」
「そう、新しい生活にグッドラック!」
「ありがとう!」
彼女の店にはよく5ドル札を両替してもらいにたずねたっけ。

■ ■ ■
プルルル・・・
電話がなった。
「もしもし?」
「もしもし?TAQ?」
「はいそうですが・・・」
「ビリーだよ。フォトグラファーの。」(161参照)
ああ!
「ビリーさん!ハウアーユウ!」
「いいよ。ありがとう。ところで今日君にプリントをお願いしたいのだが、大丈夫かな?」
「今は暇なので大丈夫ですよ。待っていますね。」
「分かった。30分後に行くよ。」

■ ■ ■
目が疲れたので外を見ていると、
アジア人の女性が入って来た。
「コンニチハ。」
業務日誌を見てくれているお客さんから今度行くと言われていたのですぐに分かった。
「こんにちは。お待ちしてましたよ。」
そしてパソコンの前に座っているシャンタンに合図をする。
「コンニチハ!」
よしいいぞ。
ほれ次は?
・・・
・・・
・・・
出てこなかった。
残念。
「ボクハシャンタンデス。」
と教えておいたのに・・・
今日も店内で日本語が話せて優越感があった。
へへへ。

■ ■ ■
ビリーさんが来た。
「ああ、あなたに会えてよかった~。僕明日で終わりなんですよ。」
「おおそうなのかい。僕も帰る前に君に会えてよかった。」
がっちりと握手を交わした。

■ ■ ■
「ハーイ、TAQ!」
ベトナム人歌手のリンさんが来た。(186参照)
「あ~!リン!わぁ~嬉しいなあ!」
昨日で最後と言っていたので嬉しい。
「もうちょっとTAQにプリントして欲しい写真ある。」
今日も素敵な笑顔だ。

■ ■ ■
「おいTAQ!」
昔、日系企業で働いていたサルバが来た。(163参照)
「お前いつまでだったっけ?ええ!明日?オーマイゴッド!」
差し入れにグリーンティーを持ってきてくれた。

■ ■ ■
午後9時だというのにビリーさん、リンさん、サルバの3人の常連客でにぎやかだ。
プルルル・・・
そこへ電話がかかってきた。
ボスからだ。
「もしもし?」
「おい!ワットアーユードゥーイング!」
はあ?
ワットアーユードゥーイングだあ?
朝出て行ったきりのボスに腹が立ってきた。
「何って・・・仕事に決まっているでしょうが!」
怒って言うと、
「そうか。よし。ガチャ。ツーツー。」
と言って通話がきれた。
なんやねん。
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by canadianman | 2010-09-09 22:10 | 業務日誌
■ ■ ■
今日は寝坊してしまった。
最後の最後で遅刻かと思ったら、
ちょうどバスが来たので間に合った。
ふぅ~。
店へ近づいて行くと、
OPENのネオンサインが点灯している。
おお。
今日もやる気だな。

■ ■ ■
「ハーイ。」と元気よくあいさつして入る。
「おお。」
昨日は笑顔で迎えてくれたのに、
今日のボスはいつもどおり無愛想だ。
やはりそうこなくては。

■ ■ ■
「何かお茶でも飲む?」
朝ごはんを食べていないので、
ボスにおごるふりをして朝食ゲットだ。
「おおいいなあ!じゃあグリーンティーで。」
「何か食べる?ドーナツは?」
「いらん。もう食べてきた。」
「分かったじゃあ行って来る。」
道路を渡り、ティムホートンへ向かう。*カナダのドーナツ屋さん
腹が減っているので自分用にドーナツ2つ、
そしてグリーンティーを2つゲットした。

■ ■ ■
パスポート用にお客さんの写真を撮っていると、
背中から視線を感じた。
写真を撮り終わって振り向くと、
イタリアンババーが立っていた。(166参照)
「わたしの写真できてるかしら?」
前にシャンタンと苦労して修復した写真だ。
「うんできてるよ。はいどうぞ。」
写真をイタリアンババーに手渡す。
彼女は写真を一枚一枚見ながら、
「あら~これはきれいね~。じゃあこれを墓に入れる写真にしようかしら。」
と言った。
このイタリアンババーは毎回自分の昔の写真を持ってきて、
墓に入れる写真を選んでいるのだ。
今日も一枚一枚ストーリーを話してくれる。
店がめちゃくちゃ忙しいので正直勘弁してほしいが、
うんうんと笑顔であいづちをうつ。
そしてテーブルの上に置いてあるティムホートンのカップを発見し、
「ヘイ!わたしのコーヒーはどこにあるのよ!この老人にコーヒーを出さないつもり?あん?」
と言い始めた。
ボスは、
「俺じゃないよ。買ってきたのはこいつだよ。」
訳の分からない言い訳をしてイタリアンババーの攻撃をふってくる。
「今度来たときは用意しておきなさいよ!ぶつぶつ・・・」
絶対彼女は長生きすると思う。

■ ■ ■
やっとお客さんが切れたので、
朝ごはんのドーナツが食べられる。
口の中はよだれでいっぱいだ。
よし、メープルディップから食べよう。メープル風味のドーナツ
ドーナツを置いたテーブルへ行く。
ない。
メープルディップがない。
まさか。
・・・
ボスが電話しながらメープルディップを食べていた。
おまえいらんゆうたやんけ~!

■ ■ ■
ボスがプリントを始めた。
おとくいフォトグラファー、トーシンから500枚もの写真を預かってきたらしい。(181参照)
「TAQ!ちょっと来い。」
ボスに呼ばれてプリンター前へ行く。
「俺がいない間、トーシンの写真はどっちが担当した?お前か?ガーヤか?」
「ああ。俺だよ。」
「何か言っていたか?」
「特に何も。」
「そうか。どうだ。この色は大丈夫か?」
はあ?
今まで口がさけてもそんなこと言わなかったのに・・・
2ヵ月半のブランクで弱気になってるな。
ここぞとばかりに、
「う~ん。どれどれ。ああ、いいんじゃない。グッド。」
と偉そうにOKサインを出してやった。

■ ■ ■
マシュマロマンが来た。(164参照)
「フォー!オフォフォフォフォ!」
目玉が飛び出しそうなくらい目を見開いて、
ボスとの再会を喜んでいた。
となりで激しく踊るマシュマロマンを迷惑そうににらむボスの姿は一生忘れないだろう。

■ ■ ■
ボスが発砲スチロールで丁寧に梱包された小包を持って来た。
きっと旅行先で買ってきたものだろう。
何がでてくるのかと思ってドキドキ見ていると、
中からヒンドゥーの神様の像が出てきた。
おお。
そして汚い店内を一生懸命意掃除し始めた。
えらい。
がんばってスペースを作り、
神様の像を置く。
おお。
独特の威圧感がある。
そしてその像についている電源コードに、
わざわざ買ってきたプラグ変換機をつけ、
電源をいれる。
すると像の周りにいある白黄緑のLEDライトがピカピカとクリスマスのように点滅しはじめた。
ピカピカはやめてくれ~。

■ ■ ■
ピカピカの像を飾ることができて満足したらしく、
ボスが店を去った。

■ ■ ■
「アニキ、コンニチュワ。」
見習いのシャンタンが来た。

■ ■ ■
ジャメイカンのさんちゃんが踊りながら入って来た。
「ハーイスウィーティー!」
mp3プレーヤーのイヤホンを外し、
本体から音楽を流す。
そしてノリノリで踊る。
さすがさんちゃん。
今日も5ドル分の写真を注文した。
プリントの待ち時間、
さんちゃんが隣に座った。
ハンズフリーで友達と電話している。
「もう聞いてよ。この隣に座ってるジャパニーズのマイフレンドが日本に帰っちゃうのよ~。ほんとに悲しいわ~。」
「ジャパンは一番だからね~。私は行くわよ~。ジャパン。このカメラもメードインジャパンだし。」
「あ~。ジャパニーズの彼氏が欲しいわ~。そうね~。うっしっしっし。それがいいわね~。ねえマイフレンド、あなた年いくつ?そう?31?ほら~ちょうどいいじゃな~い。わたし47だし。ぴったりだわ。」
ほんと面白い人だ。
「僕のメールアドレス渡しとくね。ほらこれ。」
と最後さんちゃんにメールアドレスを渡した。
「ちょっと待って。私も書くから。」
と言ってさんちゃんも紙に連絡先を書いてくれた。
「あなたいつまでだっけ?ええ?金曜!?それまでにまた来るわ。じゃあね~!」
彼女にもらった紙をみると、
電話番号と、
「Friend」
の文字が書かれていた。
ありがとうさんちゃん。

■ ■ ■
「TAQ!」
ベトナム人歌手のリンさんが来た。(185参照)
「ああ!リン!ハーイ!」
「最後にTAQにプリントしてもらい来たわ。」
「ありがとう!」
「TAQやめたら、もうこの店こない。他の人対応よくないから。TAQ帰るまえに、全部プリントしておくわ。」
こう言ってもらえると本当に嬉しい。
「TAQ、ここもう少し上までカットして、そう。パーフェス!」
このパーフェスも最後か・・・
リンさんの注文どおり写真をカットしながら、
世間話をする。
「私、ベトナムで、フォトグラファーだったのよ。メイクアップ、写真、全部一人でした。16歳のときからスタジオ持ってたのよ。」
ええ!
新事実発覚!
「何でだまってたの~?そうなんだ~。なんでこっちでフォトグラファーしないの?もったいない。」
「TAQ日本へ帰る。だから言うのOK。ベトナムじゃできるけど、カナダは難しい。私女だから大変。」
そうか。
いろいろあるんだなあ。
「TAQ、私も仕事していて色んな人に会う。そしていつも心がきれいな人がいないか探してる。でも本当に少ない。TAQあなたは本当に心がきれいな人よ。私はきれな人を見つけてハッピーだわ。」
「いやいやそんなことないよ~。リンがとても礼儀正しいから僕も親切にできるのであって、気に入らないお客さんにはとことん悪態ついてるから。ははは。」
「それは私も同じよ。あなたは本当にいい人。いつかカナダに戻ってこれると思うわ。そんな気がする。大丈夫。」
スピリチュアルで素敵なリンさんと最後は握手して別れた。
さすがエステシャンなだけあって握力がハンパなかった。
ありがとうリンさん。

■ ■ ■
「コンバンワ。」
日本語が聞こえたのでびっくりしてみると、
リッキーさんだった。(056参照)
「リッキーさん!」
「ハーイ。ゲンキー?」
「ああ、元気元気。」
今日の最後のお客さんはリッキーさんだった。
また会えるとは思っていなかったので嬉しい。

■ ■ ■
今日も遅くなり疲れたので、
バスで帰ることにした。
10時半、
Jane x Finchの交差点で座ってバスを待つ。
さすがにこの時間帯はバスがなかなか来ない。
遅い・・・
歩いた方が早いか・・・
ボーっと道路を見つめていると、
プップー
と1台の車が目の前を通るときにクラクションを鳴らした。
そして駐車場に入り、
こちらへ向かってくる。
俺?
誰に?
自分の後ろまで来たが、
ヘッドライトで誰だか全く分からない。
下手に出て他の人の迎えだと相当恥ずかしい。
しばらく様子をみたが、
どうも自分っぽかったので行ってみた。
「ああ!ディオーニのパパ!」
近所の人だった。
「今店の前を通ったら店の電気が消えてたので、終わったのかなとTAQのこと考えていたら、ちょうど見つけたよ。乗ってきな。」
おお。
ありがたや!
「もう少しだなあ。帰国。TAQが帰ると寂しいよ~。」
みんなそう言ってくれるので本当に寂しい。
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by canadianman | 2010-09-08 22:45 | 業務日誌