カナダ一治安の悪い交差点にあるフォトスタジオで働く日本人の業務日誌


by canadianman

014 幸運の1セント

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昨日の話になるが、おばあさんの写真を大プリントしたいという客が来た。
彼女の葬式が明後日にあるので、明日の夕方までになんとしても欲しいとのこと。
ボスに電話した。
「こうこうこうで明日の夕方までに写真間に合う?」
「おお。」
間に合うとのことなので、注文を受けていたのだった。
そして今日。
「この写真夕方までに頼むよ。」
「はあ?無理無理。」
「昨日言ったじゃん!」
ったく自分に都合の悪いことはすぐに忘れる。

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2時ごろボスが出て行った。
「お前のおかげで写真を取りにいかなくちゃいけなくなったからな~。」
くやし~!お前の仕事だろうが!

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ボスが娘と一緒に帰ってきた。
ちゃんと写真を持って帰ってきていた。
珍しく締め切りまでに間に合わせることができるので嬉しい。

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ジャメイカンのさんちゃんが来た。
「ハァイ!」
今日も元気だ。
前回の写真25ドル分のうち、20ドルだけ払った。
今日はまた10ドル分プリントしたいとのこと。
「大丈夫大丈夫!あとでちゃんと払うから!」
酒焼けした声で機嫌よくそう言われると何も言えない。
クリスマスに買ったというSonyのデジカメからメモリーカードを抜き出し、プリント注文機に挿入する。
急いでいるというさんちゃん、900枚の写真から目当ての写真に行き着くまでそうとう時間がかかるだろう。
がんばってくれ。

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フレームの注文があったので、写真をフレームしていると、
「ちょっと!みてもらえる?」
さんちゃんがプリント注文機の前から呼んでいる。
「これ何かおかしいのよ~。」
こないだ修理して帰ってきた注文機だが(SDカード)、今度はタッチパネルがおかしい。
画面をタッチすると、下に2cmもずれてカーソルが動いている。
プリントボタンを押すと拡大ボタンを押したことになり、わけが分からない状態だ。
「ごめん、ちょっと上の方を押してもらえる?こんな感じ。」
「ビューティフル!」
ちなみに彼女の口癖は「ビューティフル!」だ。

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「もういい!ふざけんな!」
さんちゃんが爆発した。
プリントボタンを押すたび拡大ボタンを押したことになり、その微妙なボタンの押し具合が分からず、とうとうブチ切れてしまったようだ。
「ごめんね~。こうやってこうやって。この機械イライラするよね~。」
さんちゃんをなだめた。

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「もう帰る!もういい!もういいわ!ふざけんなよこら!ピー!」
さんちゃん3度目の爆発。
ボスの娘が怯えている。
「どうなっとんじゃいこら!」
めっちゃ怖い!
がしかしここは男らしく優しくなだめる。
めっちゃ怖いけど。
もう限界のようなのであとは俺がやってあげた。
「ビューティフル!」

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ボス、娘を連れて出て行った。
何も言わなかったが、恐らくもう戻ってこないだろう。

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おとくいフォトグラファーのパヒーラが来た。
彼はとても優しいおじさんで、好きな客の一人だ。
パヒーラに渡した写真を見てさんちゃん、
「わ~お!ビューティフル!」
「あなたどこのカメラ使ってるの?コダック?ソニー?」
その選択肢に突っ込みを入れたくなったが、(多くのフォトグラファーはキャノンかニコンかのどちらかを使う)
「ソニー。」
ソニーかい!
さんちゃんスポーツ選手のみせるようなすがすがしいガッツポーズで
「イエス!」
やっぱおもしろいわ。この人。

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白人女性が来た。
カナディアンパスポート用の写真が欲しいとのこと。
「職員の人たちってピッキーなんでしょ?私何度もオフィスに行くのは嫌だから、ちゃんとした写真をとってね。お願い。」
え?
ピッキーって何?
「英語の勉強中だから、今後のためにピッキーという言葉の意味を教えてください。」
という会話から、いろいろおしゃべりをした。(ピッキーは細かいミスをすぐ見つけて指摘するみたいな感じ。)
彼女はイタリア系らしいが、完璧できれいな英語をしゃべるのでカナダ生まれには間違いないだろう。
写真を切り終わると
「やったー!パスポート写真をゲットー!」
とはしゃいで、
「おつりはとっといて。幸運の1セントよ!」
と笑顔で写真を受け取ってくれた。
イタリアンってほんといつも陽気で素敵だな~って思う。
「素敵なカナダライフを送ってね!英語の勉強がんばってね!」

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あと30分で閉店なので、昨日大プリントを注文した男性に電話した。
「写真できたよ。早く取りに来ないと、店閉まるよ。」
するとためらうことなく
「明日の朝とりに行くわ~。」
だったら初めからそう言え~!

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店を閉めるのでボスに電話した。
「今店閉めるから、明日の朝フレームのお客さんの対応よろしく。」
そしたら、
「うう・・・おお・・・わかった・・・明日は11時に来い。ガチャ。ツーツー。」
昼寝しとったんかい!

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店を閉めたあと隣の薬局にビタミン剤を買いに行った。
しょっちゅう両替をお願いしに行くので、店員のおばちゃんとは顔見知りだ。
客がいなくて暇だったので世間話をした。
「日本行ってみたいけど、高いでしょ~?」
やっぱり日本の物価高は有名みたい。
10セントおまけしてくれた。
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by canadianman | 2010-01-16 19:36 | 業務日誌