カナダ一治安の悪い交差点にあるフォトスタジオで働く日本人の業務日誌


by canadianman

186 ファイナルパーフェス

■ ■ ■
今日は寝坊してしまった。
最後の最後で遅刻かと思ったら、
ちょうどバスが来たので間に合った。
ふぅ~。
店へ近づいて行くと、
OPENのネオンサインが点灯している。
おお。
今日もやる気だな。

■ ■ ■
「ハーイ。」と元気よくあいさつして入る。
「おお。」
昨日は笑顔で迎えてくれたのに、
今日のボスはいつもどおり無愛想だ。
やはりそうこなくては。

■ ■ ■
「何かお茶でも飲む?」
朝ごはんを食べていないので、
ボスにおごるふりをして朝食ゲットだ。
「おおいいなあ!じゃあグリーンティーで。」
「何か食べる?ドーナツは?」
「いらん。もう食べてきた。」
「分かったじゃあ行って来る。」
道路を渡り、ティムホートンへ向かう。*カナダのドーナツ屋さん
腹が減っているので自分用にドーナツ2つ、
そしてグリーンティーを2つゲットした。

■ ■ ■
パスポート用にお客さんの写真を撮っていると、
背中から視線を感じた。
写真を撮り終わって振り向くと、
イタリアンババーが立っていた。(166参照)
「わたしの写真できてるかしら?」
前にシャンタンと苦労して修復した写真だ。
「うんできてるよ。はいどうぞ。」
写真をイタリアンババーに手渡す。
彼女は写真を一枚一枚見ながら、
「あら~これはきれいね~。じゃあこれを墓に入れる写真にしようかしら。」
と言った。
このイタリアンババーは毎回自分の昔の写真を持ってきて、
墓に入れる写真を選んでいるのだ。
今日も一枚一枚ストーリーを話してくれる。
店がめちゃくちゃ忙しいので正直勘弁してほしいが、
うんうんと笑顔であいづちをうつ。
そしてテーブルの上に置いてあるティムホートンのカップを発見し、
「ヘイ!わたしのコーヒーはどこにあるのよ!この老人にコーヒーを出さないつもり?あん?」
と言い始めた。
ボスは、
「俺じゃないよ。買ってきたのはこいつだよ。」
訳の分からない言い訳をしてイタリアンババーの攻撃をふってくる。
「今度来たときは用意しておきなさいよ!ぶつぶつ・・・」
絶対彼女は長生きすると思う。

■ ■ ■
やっとお客さんが切れたので、
朝ごはんのドーナツが食べられる。
口の中はよだれでいっぱいだ。
よし、メープルディップから食べよう。メープル風味のドーナツ
ドーナツを置いたテーブルへ行く。
ない。
メープルディップがない。
まさか。
・・・
ボスが電話しながらメープルディップを食べていた。
おまえいらんゆうたやんけ~!

■ ■ ■
ボスがプリントを始めた。
おとくいフォトグラファー、トーシンから500枚もの写真を預かってきたらしい。(181参照)
「TAQ!ちょっと来い。」
ボスに呼ばれてプリンター前へ行く。
「俺がいない間、トーシンの写真はどっちが担当した?お前か?ガーヤか?」
「ああ。俺だよ。」
「何か言っていたか?」
「特に何も。」
「そうか。どうだ。この色は大丈夫か?」
はあ?
今まで口がさけてもそんなこと言わなかったのに・・・
2ヵ月半のブランクで弱気になってるな。
ここぞとばかりに、
「う~ん。どれどれ。ああ、いいんじゃない。グッド。」
と偉そうにOKサインを出してやった。

■ ■ ■
マシュマロマンが来た。(164参照)
「フォー!オフォフォフォフォ!」
目玉が飛び出しそうなくらい目を見開いて、
ボスとの再会を喜んでいた。
となりで激しく踊るマシュマロマンを迷惑そうににらむボスの姿は一生忘れないだろう。

■ ■ ■
ボスが発砲スチロールで丁寧に梱包された小包を持って来た。
きっと旅行先で買ってきたものだろう。
何がでてくるのかと思ってドキドキ見ていると、
中からヒンドゥーの神様の像が出てきた。
おお。
そして汚い店内を一生懸命意掃除し始めた。
えらい。
がんばってスペースを作り、
神様の像を置く。
おお。
独特の威圧感がある。
そしてその像についている電源コードに、
わざわざ買ってきたプラグ変換機をつけ、
電源をいれる。
すると像の周りにいある白黄緑のLEDライトがピカピカとクリスマスのように点滅しはじめた。
ピカピカはやめてくれ~。

■ ■ ■
ピカピカの像を飾ることができて満足したらしく、
ボスが店を去った。

■ ■ ■
「アニキ、コンニチュワ。」
見習いのシャンタンが来た。

■ ■ ■
ジャメイカンのさんちゃんが踊りながら入って来た。
「ハーイスウィーティー!」
mp3プレーヤーのイヤホンを外し、
本体から音楽を流す。
そしてノリノリで踊る。
さすがさんちゃん。
今日も5ドル分の写真を注文した。
プリントの待ち時間、
さんちゃんが隣に座った。
ハンズフリーで友達と電話している。
「もう聞いてよ。この隣に座ってるジャパニーズのマイフレンドが日本に帰っちゃうのよ~。ほんとに悲しいわ~。」
「ジャパンは一番だからね~。私は行くわよ~。ジャパン。このカメラもメードインジャパンだし。」
「あ~。ジャパニーズの彼氏が欲しいわ~。そうね~。うっしっしっし。それがいいわね~。ねえマイフレンド、あなた年いくつ?そう?31?ほら~ちょうどいいじゃな~い。わたし47だし。ぴったりだわ。」
ほんと面白い人だ。
「僕のメールアドレス渡しとくね。ほらこれ。」
と最後さんちゃんにメールアドレスを渡した。
「ちょっと待って。私も書くから。」
と言ってさんちゃんも紙に連絡先を書いてくれた。
「あなたいつまでだっけ?ええ?金曜!?それまでにまた来るわ。じゃあね~!」
彼女にもらった紙をみると、
電話番号と、
「Friend」
の文字が書かれていた。
ありがとうさんちゃん。

■ ■ ■
「TAQ!」
ベトナム人歌手のリンさんが来た。(185参照)
「ああ!リン!ハーイ!」
「最後にTAQにプリントしてもらい来たわ。」
「ありがとう!」
「TAQやめたら、もうこの店こない。他の人対応よくないから。TAQ帰るまえに、全部プリントしておくわ。」
こう言ってもらえると本当に嬉しい。
「TAQ、ここもう少し上までカットして、そう。パーフェス!」
このパーフェスも最後か・・・
リンさんの注文どおり写真をカットしながら、
世間話をする。
「私、ベトナムで、フォトグラファーだったのよ。メイクアップ、写真、全部一人でした。16歳のときからスタジオ持ってたのよ。」
ええ!
新事実発覚!
「何でだまってたの~?そうなんだ~。なんでこっちでフォトグラファーしないの?もったいない。」
「TAQ日本へ帰る。だから言うのOK。ベトナムじゃできるけど、カナダは難しい。私女だから大変。」
そうか。
いろいろあるんだなあ。
「TAQ、私も仕事していて色んな人に会う。そしていつも心がきれいな人がいないか探してる。でも本当に少ない。TAQあなたは本当に心がきれいな人よ。私はきれな人を見つけてハッピーだわ。」
「いやいやそんなことないよ~。リンがとても礼儀正しいから僕も親切にできるのであって、気に入らないお客さんにはとことん悪態ついてるから。ははは。」
「それは私も同じよ。あなたは本当にいい人。いつかカナダに戻ってこれると思うわ。そんな気がする。大丈夫。」
スピリチュアルで素敵なリンさんと最後は握手して別れた。
さすがエステシャンなだけあって握力がハンパなかった。
ありがとうリンさん。

■ ■ ■
「コンバンワ。」
日本語が聞こえたのでびっくりしてみると、
リッキーさんだった。(056参照)
「リッキーさん!」
「ハーイ。ゲンキー?」
「ああ、元気元気。」
今日の最後のお客さんはリッキーさんだった。
また会えるとは思っていなかったので嬉しい。

■ ■ ■
今日も遅くなり疲れたので、
バスで帰ることにした。
10時半、
Jane x Finchの交差点で座ってバスを待つ。
さすがにこの時間帯はバスがなかなか来ない。
遅い・・・
歩いた方が早いか・・・
ボーっと道路を見つめていると、
プップー
と1台の車が目の前を通るときにクラクションを鳴らした。
そして駐車場に入り、
こちらへ向かってくる。
俺?
誰に?
自分の後ろまで来たが、
ヘッドライトで誰だか全く分からない。
下手に出て他の人の迎えだと相当恥ずかしい。
しばらく様子をみたが、
どうも自分っぽかったので行ってみた。
「ああ!ディオーニのパパ!」
近所の人だった。
「今店の前を通ったら店の電気が消えてたので、終わったのかなとTAQのこと考えていたら、ちょうど見つけたよ。乗ってきな。」
おお。
ありがたや!
「もう少しだなあ。帰国。TAQが帰ると寂しいよ~。」
みんなそう言ってくれるので本当に寂しい。
[PR]
by canadianman | 2010-09-08 22:45 | 業務日誌